午後の名作ドラマ 松本清張 『蒼い描点』ネタバレ感想 [2Hドラマ]
午後の名作ドラマ 松本清張 『蒼い描点』
原作:松本清張「蒼い描点」
(新潮文庫刊)
<出演者>
菊川怜 (椎原典子)
田辺誠一 (崎野竜夫)
黒田福美 (村谷阿沙子)
高橋ひとみ (偽よしこ)
小日向文世 (白井良介)
大杉漣 (田倉義三)
ほか
いきなりネタバレですが、高橋ひとみさん演ずるところの、ニセよしこさんが、実は犯人だったので、驚くとともに、高橋ひとみさんまた犯人役なのかと失礼ながら笑ってしまいました。
やはり綺麗な人に犯人役をやらせると絵にもなるし、怜悧な感じがより殺人を際立たせることになるからでしょうか。
ですが、手すりのしっかりとある場所で、下を覗き込んでいるようなシチュエーションでないと、人を突き落とすということは、かなり力の強い人でもないと困難なことだと思います。崖っぷちや階段なら、か弱い女性でもいくらでも可能と容易に想像できますが。
ぼくは、あまりTVは見ない方だと思うので、失礼な発言になるかもしれないのですが、菊川玲さんをなんか久しぶりに見たような印象です。
真ん中分けというのも新鮮でしたが、たしかずっとパンツスタイルだったような?? 実に曖昧な記憶なんですが、スカートを見なかったような気がしています。
それで、まあお話はよくあるような盗作とか贋作とかの騒ぎの中で箱根と東京で起こる殺人事件なのですが、さすがにミスリードがお上手で、最初は村谷という日本現代文学大賞を受賞した女流作家さんが真犯人であるように見せかけ、次いで、実はそうではなくほんとうの真犯人は、陽光社「週間文論」編集長である、小日向文世さんが演ずる白井良介なのかと匂わせておきながら、まだその奥に真実が隠されていた! というどんでん返しが楽しい物語でした。
しかし、短編を膨らませて長編にしてもやはり盗作ということになるんでしょうか?
作家さんならば、いくらでも削ったり、水増ししたり、ぼやかしたり、誇張したり、真逆なパターンにしたりと、さまざまなバリエーションを駆使して、盗作といいますか、オマージュといいますか、かなり似ているといいますか、そんな感じでやれなくはないですよね。
ただ、そんなくだらないことはやらないだけで、しかし、他の人の小説を読んだり、あるいはTVドラマを観て、あるいはニュースを見て、新聞を読んで、お風呂に浸かりながら、フッとインスピレーションが湧いてくるということはあるわけで、とにかく名前のある立派な作家さんが、たとえ同人誌で素敵なヒントを得たとしても、そこはかとなく似てるいるなあとわかるくらいの真似方ではないでしょうか。いくらなんでもコピペはしないでしょうから、あくまでも村谷女史の盗作疑惑は、内輪の話で、同人誌の同人だけが知っている墓場の中まで持っていく類いの秘密なのだと思います。
事実、刺された村谷女史は、もう作家は辞めるとはいっていましたが、今回の盗作云々は、一切世の中に知らされることなくうやむやにされて終わりなのだと思います。
アイディアを頂戴するくらいのことは、誰でもやっていることだと思いますし、今回のケースは、ネタ本があったというわけですね。
しかし、その同人誌の偉い先生は、七年前に亡くなっていることを考えると、そちらもなにやら事件性がありますね。
たしかに、文才のある方でも、アイディアの枯渇ということはあることなのかも知れないのですが、いわゆる盗作とパスティーシュあるいは、オマージュというものとの線引きがいまひとつ、ぼくにはよくわかりません。
パスティーシュもオマージュも、元の対象となる作品があったからこそ生まれ出てきたものであるとは思うのですが、「出藍の誉れ」みたいなことも稀にあるやも知れず、新しい解釈の斬新さが、オリジナルを凌駕するなんてこともあるかも知れません。
まあ、あまりこの事に関して考えてみたいと思うような事柄でもありませんので、どうでもいいのですが、松本清張さんがお書きになっているくらいですから、実際に盗作疑惑とかいうものはそこらへんにごろごろ転がっているのかもしれませんね。
菊川玲さんの演ずる編集者椎原典子は、村谷先生を姉妹のように感じていたという、作家と編集者の関係ではありえないようないい関係であったようで、エンディングも人を信頼するという編集者椎原典子の素直な性格が反映して清々しさが漂い、よかったと思いました。
菊川玲さんの次回主演作を心待ちにしたいと思いました。
ありがとうございました。
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